【U-NEXTで観る】女囚シリーズ 梶芽衣子の悶絶級のカッコよさ
『女囚701号 さそり』にはじまる梶芽衣子主演の女囚シリーズ4本を観ました。ぼくの中では梶芽衣子といえばテレビドラマ『寺内貫太郎一家』の静江役が強く印象に残っているが、『さそり』でそれはガラリと変わった。
『寺内貫太郎』では足に障害のあるおとなしい女性の役でした。『ガラスの動物園』のローラのように。
『さそり』では松島ナミという、自分を裏切った男への復讐に燃える女を演じている。この女、実にしぶとい。
どんなにいびられても、過酷で理不尽な労務を強いられても弱音を吐かない。怒りに満ちた目で相手をにらむだけだ。
実はぼくは何年か前に、この映画の冒頭10分くらいを他のVODで見たことがある。でも、裸の女囚たちが行進させられてるシーンで嫌気がさして、見るのをやめてしまったのだ。
女性の裸は好きだけど、裸の女がいっぺんにたくさん出てくるのはキライなのだ。みっともない、と思ってしまう。裸の女をいっぱい出しときゃ観客もよろこぶだろう、と考えてるようでそれがイヤなのだ。
それが今回シリーズ全4作を観たのは、先に『野良猫ロック』(全5作)を観て梶芽衣子の魅力にとりつかれたから。
とくに3作目の『野良猫ロック セックス・ハンター』のラストシーンで梶芽衣子が見せる表情がすばらしい。あの数秒のショットを観るだけで価値がある。
梶芽衣子、いいなあ、と今さらながらその真価を知ることになったのだが、彼女の代表作といえば『さそり』シリーズだよね、というわけ。
さそりと呼ばれる女・松島ナミはとことん悲惨な目にあう。
で、まず愛する男が刑事なんだが、その捜査に利用されて最後には裏切られ、無実の罪で監獄に送られる。
監獄では、こんなヒドい看守いるの?てぐらい、ありえないイジメを受け、殴られ蹴られ。よく死なないよなあ。
ナミの妥協しない性格ゆえ他の女囚からも疎まれてしまう。ことあるごとに嫌がらせを受けるが、ナミはきっちり落とし前はつけるのだ。
ナミの計略にはまって大ケガした女囚の一人がガラスの破片を握りしめてナミを追いかける。このシーンではその女優さんの顔が『八つ墓村』の小川真由美ばりの化け猫メークになり、なにやら妖しい色のライトで照らされる。
ナミの顔めがけて振り下ろしたガラスの破片がその後ろにいた刑務所長の渡辺文雄の右目に突きささる。しかし、渡辺文雄は声をあげることもなく、微動だにしない。
狂った演出だ。
監督はこの作品が第一作となる伊藤俊也で、この他にもガラス張りの床下からのショットや室内セットを回転させて場面を変えたり画面構成にこだわっている。このあたりの演出には好みがわかれるところだろうが、少なくとも映画の雰囲気にはあっていると思う。
ナミが復讐を果たすターゲットはエリート刑事や、政治家など、いわゆる権力者側にいる人間なのだ。それも時代の空気にあっていたのだろう。
映画は大ヒットした。
開演を待つ観客が長蛇の列になり、よろこんだ館主たちが興奮して映画会社にお礼の電話をかけたという。
映画が斜陽産業といわれはじめた頃の話です。
ヒットの要因は梶芽衣子のスタイリッシュなカッコよさにつきるでしょう。
セリフを極端に少なくし、怒りに満ちた目を共演者に向ける。ものすごい目力だ。
脱獄したナミは黒いツバ広の帽子と黒のトレンチコートに身を包み、復讐を実行していく。
細くしなやかな肢体が黒一色にまとわれ、そのカッコよさは思わず唸ってしまうほど。
ターゲットの一人を始末したあとに、長い長いエスカレーターに乗って姿を消すナミ。日本映画史に残る名場面だ。
海外でも人気が高いようで、有名なのはクエンティン・タランティーノが梶芽衣子の大ファンらしく、『キルビル』では、梶がうたう『さそり』の主題歌「怨み節」を使用しています。
『キルビル』には「修羅の花」も流れましたね。この歌は同じ梶芽衣子主演の『修羅雪姫』の主題歌です。
U-NEXTさんにはぜひ『修羅雪姫』も配信してもらいたいですね。
U-NEXTで女囚さそりシリーズを観る たくさんの人がこの映画を観るようになれば、『修羅雪姫』もラインナップされるかもしれませんね。
『新・女囚さそり』では多岐川裕美が松島ナミを演じ主題歌もうたっていますが、やはり梶芽衣子には及びませんでした。
世界中の映画ファンを魅了した梶芽衣子の『さそり』をあなたの目で確認してみてください。