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たかが映画じゃないか!U-NEXTで観るヒッチコック映画27本

ヒッチコックの写真

wikipedia掲載画像

たかが映画じゃないか

ヒッチコックは1899年にイギリスで生まれました。家は鶏肉店を営んでいたそうです。おかげで小さいころ卵ばかり食べさせられてすっかり卵が嫌いになってしまったとか。

『泥棒成金』では目玉焼きにタバコを突っ込んで火を消す有名なシーンがあるほど。

たかが映画じゃないか!はヒッチコックが『山羊座の下に』の撮影中に主演のイングリッド・バーグマンに放った言葉です。

晶文社から出ている「映画術 ヒッチコック・リュフォー」にその時の様子が詳しく描写されています。

少し引用してみましょう。

イングリッド・バーグマンはそういった大がかりな撮影方式が気に入らず、しょっちゅうわたしに「なぜ」「なぜ」といって追及し、文句を言った。わたしは議論をしてもはじまらないと思ったから、彼女にただこう言ってやったんだよ。「イングリッド、たかが映画じゃないか」。

 イングリッド・バーグマンは傑作にしか出たがらない女優だった。しかし、一本の映画が傑作になるかどうかなんて、だれにもわかるはずがないではないか。

 ヒッチコックはその全作品が一貫してサスペンス映画という稀有な監督でとにかく面白い作品を撮ることだけを考えていました。

「映画術」はフランソワ・トリュフォーが敬愛するヒッチコックに50時間におよぶインタビューをした結果生まれた名著。

この本の中でヒッチコックがしきりに言及しているのはその作品がどれだけの収益を上げたかである。

映画は純粋に娯楽だと考えていたのだろう。

ヒッチコックはおもしろい映画を撮るために様々な工夫をこらした。イングリッド・バーグマンがイライラした大がかりな撮影方式もその一つである。

ぼくは思うのだがカメラワークとか実験的映像とかが売りの映画はたいていおもしろくない。作り手の一人よがりが物語のジャマになるから。

その点ヒッチコックの実験的手法はあくまでも話をおもしろくするための手段にすぎない。

ストーリーのジャマにならないのだ。

「映画術」を読むとヒッチコックが実にいろんなことを考えて撮影に臨んでいたことがわかって興味深い。

これから映画を作ろうとする人、映像作家を志す人はゼッタイに読んだほうがよいだろう。

映画学校の教材にするべきだ。

U-NEXTでは27作品が配信中

 U-NEXTではイギリス時代の作品が6本、アメリカに渡ってからのが21本配信されている。

アメリカに渡ったのが1940年だからそれ以前のイギリス時代の作品はあまりにも古く状態がよくないのかもしれない。フィルムが残っていないものもあるかも。

ただ『暗殺者の家』以降の主要な作品は観れるので安心してください。

『バルカン超特急』もちゃんとラインナップされていますよ!

 すこし不満に思うのはハリウッドで作った30本の商業映画のうち9本が配信されていないことである。

『マーニー』以降の5作品と『スミス夫妻』『ハリーの災難』『知りすぎていた男』『めまい』だ。

とくに『知りすぎていた男』『めまい』は代表作のうちに数えられる傑作だし『フレンジー』や生涯最後の作品『ファミリー・プロット』も外してほしくなかった。

 ヒッチコックの映画は失敗作といわれるものでも必ず印象に残るシーンがある。

たとえば『マーニー』における冒頭のティッピ・ヘドレンが盗みに入るシーンのスリルは尋常じゃないし『引き裂かれたカーテン』での農家での残酷でありながらどこかコミカルな殺人など。

世間の評判はよくないけれど『引き裂かれたカーテン』はぼくは大好きなのだ。

ポール・ニューマンが黒板に書かれた核ミサイルの方程式を必死で暗記するシーン、バレエの舞台鑑賞中に敵に取り囲まれてしまうシーンのハラハラドキドキなど唸るほどの演出のすばらしさ。

なんであんなに酷評する人が多いのかまったく理解できない。

『ハリーの災難』だってあんなふざけた映画、ヒッチコックのほかに誰が作れるというのか!

この映画でデビューしたシャーリー・マクレーンの魅力も見逃せません。

彼女のいつでも泣いてるような目、大好きだなあ。

 

これらの作品が欠けているけどラインナップされている27本はどれもみな映画ファンなら一度は観ておくべき映画といえます。

今なら31日間無料トライアルが使えるのでぜひ試してみてください。

ヒッチコックを観る人が増えれば今配信されていない作品もいつかラインナップされるんじゃないかと期待できるから。

 

 

先ずはこの作品を観よう!

サイコ

見知らぬ乗客 

北北西に進路を取れ

 ハリウッド時代の傑作です。

とくに『サイコ』はすばらしく何回観てもうっとりしてしまう。これをヒッチコックの実験映画だと評するものも多い。

たしかに映画史的に見ても実に実験的な手法をとりいれており、その後の映画作りに強烈なインパクトを与えた。

このことに関しても先にあげた『映画術』でトリュフォーが触れています。

再びこの本から引用させてもらいましょう。

T 『サイコ』は実験映画だと言っていいでしょうか。

そうだな。そう言えるかもしれないな。しかし、わたしの最大の満足は、この映画が観客にすばらしくうけたことだ。それがわたしにはいちばん大事なことだ。主題なんか、どうでもいい。演技なんか、どうでもいい。大事なことは、映画のさまざまなディテールが、映像が、音響が、純粋に技術的な要素のすべてが、観客に悲鳴をあげさせるに至ったということだ。大衆のエモーションを生みだすために映画技術を駆使することこそ、わたしたちの最大の歓びだ。『サイコ』では、その歓びを達成できた。観客をほんとうに感動させるのは、メッセージなんかではない。俳優たちの演技でもない。原作小説のおもしろさでもない。観客の心をうつのは、純粋に映画そのものなのだ。

 感動します。

ヒッチコックは映画作りに魂をささげ あくまでも観客をよろこばせることだけに力を注いだのだ。そんな人の作る映画がおもしろくないわけがない。

ぼくらはヒッチコックの計算どおり悲鳴をあげまくることになる。

映画はドキュメンタリータッチ風な画面ではじまり、若いカップルがつかの間の情事におぼれる場面からはじまる。

2人は愛しあっているが貧しく結婚に踏みきるだけのお金がない。

そんなとき女は会社のお金を銀行に預けるようにと4万ドルの大金を持たされる。

しかし、女は現金を持ち逃げし、車で男が住む町に向かう。

途中、ハイウェイからそれた道にあるさびれたモーテルで一夜を過ごすことになった女だが、そのモーテルを経営する青年と親しく話をすることになる。

青年の身の上話を聞いているうちに女は現金を持ち逃げしたことを後悔し、引き返そうとするのだが・・・

映画の序盤では逃げる女の車をパトロールの警官が呼び止めたりドキドキさせるくだりもありヒッチコックお得意のサスペンスものかと思いきや、話は中盤からとんでもない方向に展開していく。

これは観客がまったく予想もできないシナリオで映画はどうなるのかわからぬまま、息苦しいほどの緊張感のうちに進んでいく。

このすばらしい作品を観てない人がいるとは信じられない。

同時に観てない人がうらやましい。

だって、新鮮な気持ちではじめから観れるんだから。

映画のポスターです

『サイコ』ポスター・wikipedia掲載画像より

 つぎに『見知らぬ乗客』ですがこれは交換殺人をテーマにしたサスペンス。

見知らぬ乗客を演じるロバート・ウォーカーが実に魅力的なキャラで映画史に残る悪役ではないでしょうか。

この作品でもヒッチコックの映画技法は冴えわたる。ロバート・ウォーカー演じるブルーノがプロ・テニスプレイヤーのガイに交換殺人を持ちかけ、ガイの奥さんを殺害するシーン。

絞殺される奥さんのメガネが落ちて、そのメガネに殺しの情景が映る・・・

また、パーティのシーンではブルーノが社交界の婦人に冗談で絞殺はこうするんですよ、と実演してみせる。そこにメガネをした別の婦人があらわれ、殺した女を思い出したブルーノは動揺し本気で婦人の首を絞めてしまう。

ロバート・ウォーカーの陰影のある演技がすばらしくヒッチもこの役者については絶賛しています。

ストーリーもこれほどサスペンスの利いた映画はめずらしく最後まで目を離すことはできないでしょう。

 

『北北西に進路を取れ』ですがこれは実はヒッチコック映画の典型的な作品ともいえるでしょう。

お得意の巻き込まれ型サスペンスの代表作です。

事件につぐ事件、冒険につぐ冒険の連続でストーリーの要約はとてもできません。

アメリカ時代のヒッチコックの作品を総括するものだとトリュフォーも認めています。

それに全体の雰囲気がとてもオシャレ!

主演のケイリー・グラントのスーツの着こなしとか自分のイニシャルをデザインしたマッチ箱を持っていたり、とにかくカッコいいのです。

歩くときのズボンの裾の揺れ具合とか参考になりますね。

謎の美女エヴァ・マリー・セイントも『波止場』でデビューしたころは泥臭い感じだったのが、この映画ではすっかりエレガントになっていてヒッチコック好みの女優さんに変身していました。

サスペンスと同時にオシャレでロマンチックな感じもあるので奥さんと二人で観てもいいと思いますよ。

 

U-NEXTの特徴

配信本数がとにかくものすごいことになっています。

最近の発表では23万本以上のタイトルがあり、そのうち21万本が見放題とのこと。

この手の配信サービスはAmazonプライム、ネットフリックス、TSUTAYA、Hulu,FOD,dアニメストアなどありますが、その中でもU-NEXTは洋画、邦画、アニメ、アジアン・ドラマの各部門で本数がいちばん多い。

洋画は二位のネットフリックスの倍以上ですね。

アニメ専門のサービスよりアニメの本数が多いというのも驚きです。

毎月の料金が2,189円と高いのが難点ですが、毎月1200円分のポイントが付与されるのでこれをうまく使えばそれほど割高な感じはありません。

今なら黒澤明の作品がほぼ全作観ることができますし、映画好きならU-NEXTで決まりでしょう。

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ヒッチコックの映画は印象に残るシーンがたくさん

『裏窓』 グレース・ケリーの顔がジェームス・スチュアートの顔に近づいていく瞬間のコマ落としとスローモーションを二重に駆使したかのような不思議な感覚。気持ちのときめきを表現したとヒッチは語っている。

『断崖』では夫に殺されるのではないかとの疑念に取りつかれた新妻のもとに夫がミルクを持っていく。そのミルクの白さが不気味に光る。このシーンでヒッチはミルクの中に豆電球を仕込み観客の目がミルクだけに注がれるように仕向けたのだ。

『レベッカ』 デビッド・O・セルズニックに招かれてアメリカに渡った最初の作品。セルズニックは前年に『風と共に去りぬ』を製作したばかりで鼻息がいちばん荒い時代ですね。

『レベッカ』では前妻の死の真相を語るシーンでまるでレベッカがそこにいるかのようにカメラが動く。観客は誰もいない空間にレベッカの姿を見るのだ。

『第3逃亡者』 砂浜にうちつけられた死体を見つけて驚愕の顔になる女性にインサートされる海鳥のカット。実に印象的だった。

『白い恐怖』はなんといってもサルバドーレ・ダリが協力した悪夢のイメージが強烈。視覚的にシャープで明晰なまったくダリならではのシーンである。

『汚名』 ケイリー・グラントは任務のため愛する女(イングリッド・バーグマンが演じている)をある男のもとに送る。男の邸はナチのスパイのたまり場だった。男にプロポーズされたと報告する女にケイリー・グラントは任務を考えはっきりとは反対できない。愛する女を他の男のベッドに送らなければならない悲痛で皮肉な状況が衝撃的だ。

『逃走迷路』冒頭の軍需工場にたちこめるどす黒い煙が見るものの気持ちをこれ以上ないくらいに揺さぶる。

そして例の有名な自由の女神像のシークエンス。映画史のどこを探したってあれほどのシャープな映像はほかには見当たらないだろう。

きりがない。

ヒッチコックの映画はほんとうに映画そのものだ。

願わくばU-NEXTにラインナップされていない『めまい』『知りすぎていた男』『引き裂かれたカーテン』『マーニー』『フレンジー』『ファミリー・プロット』も配信されんことを!