犬のお散歩

犬と散歩しながら人間についてテキトーに考察してみた

U-NEXTの見放題映画の中にはケッコウくだらない作品もあるぞ!

 

映画のポスターです

史上最低の映画監督による最低作品『死霊の盆踊り』
エドワード・D ・ウッド・Jrとはどんな人?

 またまたU-NEXTの検索機能でどんな映画があるんかな?と見ていたら『死霊の盆踊り』を発見してニヤリとした。

タイトルだけは何度も耳にするのでよく覚えていたのだが観る機会に恵まれなかったのだ。

この映画を観終わった今言えるのは「観る機会に恵まれなかった」のではなく「観なくて済む機会に恵まれていた」のだ。

一緒に観始めた嫁は10分もしないうちに怒りだした。

ぼくは素直にあやまり『ごめん。ひとりで観るよ』と言うしかなかった。それぐらいひどい。観ていて泣けてくる。

ストーリーは、特にない。

あるにはあるが悲しいほど陳腐で小学生でもゴミ箱に捨てるようなレベルだ。

夜の帝王と称するおじさんが出てきて墓場の死人を甦らせ自分をなぐさめるためにひたすら踊りをさせるのだ。

90分間のほとんどが裸の女がただ踊るだけ。

あとは何もない。

これは女の裸を見せるためだけの映画だった。

たぶん当時人気が出てきたゾンビ映画にもあやかって甦った死人に踊らせたのだろう。恐怖とエロティシズムの問題作だ。

監督にはA・C・スティーヴンという人がクレジットされているが原作とシナリオはかのエド・ウッドであり、実質はこの人の作品と言っていいだろう。

エド・ウッド。

史上最低の映画監督と評されながらもその作品はいまやカルト的な人気を誇っており一流の映画人(たとえばティム・バートンやデヴィッド・リンチ、サム・ライミ、クエンティン・タランティーノなど)がファンであることを公言している。

ぼくも『プラン9・フロム・アウタースペース』と『グレンとグレンダ』の2本の監督作を観たがどちらも最低の出来だ。

ほめるところが何一つない。

ほめるところはないが話したいことは山ほどあるぞ。

上記2本の映画はエド・ウッドが意図したところではないが凡人の創造を超えるシュールな映像のてんこ盛りだ。

『グレンとグレンダ』では恋人の性倒錯に悩む女性がその重圧に苦しむ。気持ちが押しつぶされそうになる女性を描くのにエド・ウッドは大木の下敷きになってもがき苦しむ女性の姿をスクリーンに映し出した。

大木の下敷き・・・これは比喩ではなく本当にそう描いてしまったのだ。

他にもなんの伏線もなく突如としてバファローの大群が現われる。何度も。何が言いたいのか観客は悩みに悩む。

女装癖のある主人公が恋人のセーターを撫でまわすシーンで現れるので抑えきれない欲求を表現しているのだろう。

 また。女装をやめられない主人公が世間の目を気にする場面ではいきなり大勢の人間に取り囲まれ指をさされる画になる。

シュールだ。

アンドレ・ブルトンもアルトーも真っ青な表現技法なのです。

前衛映画というべきなのかもしれない。

エド・ウッドのシナリオで特徴的なのがセリフがとんでもなく陳腐なところ。陳腐だし何を言ってるのか観客には理解不能なのだ。

たぶん詩的な表現で観る人の心を揺さぶろうとした結果なのだろう。名セリフを書こうとして迷セリフになってしまったのだ。

まったく頭が痛くなる。

残念ながら『グレンとグレンダ』はU-NEXTにはなく、ぼくはAmazonプライムで観たのだ。

一方の『プラン9・フロム・アウタースペース』はU-NEXTにあるのでぜひ無料トライアルで体験してみてください。

 *なお本ページの情報は2021年6月時点のものです。最新の配信状況等はU-NEXTサイトにてご確認ください。

 

『死霊の盆踊り』だけじゃない。他にもくだらない映画はいっぱいあるぞ!

U-NEXTで観ることのできるトンデモ映画はほかにもあります。

『怪獣王ゴジラ』・・・1956年制作のアメリカ映画です。東宝の本家『ゴジラ』は1954年だからわずか2年で作られたことになる。東京に友人を訪ねに来たアメリカ人の新聞記者が偶然ゴジラの出現に遭遇するというストーリーでオリジナルの『ゴジラ』にアメリカで撮影したパートを差し込んだだけの再編集版だ。

ところが海外ではこっちの再編集版をゴジラ映画のオリジナルと認識している人が多いそうです。

主演は『鬼警部アイアンサイド』で有名なレイモンド・バーですが役割としては事件の一々を本国に報告するだけ。活躍するのは編集されたといってもやはり志村喬、宝田明、平田明彦、河内桃子(とんでもなく可愛い!)等なのだが、結局アメリカで公開するには白人が主人公でなければ通用しないということなのでしょう。

おかげでやたらナレーションの多い映画となりましたがオリジナルの凄みは残されていたと思います。

ひとつだけ納得できないのがゴジラが核の脅威を象徴する存在であるというオリジナルの根本が失われているところ。

原爆を落としたアメリカが作ったのだから当然といえばそうかもしれませんが。

 

『女吸血鬼』・・・これは日本映画です。『東海道四谷怪談』で有名な中川信夫が1959年に監督した作品で天地茂の吸血鬼ぶりがなかなか似合っていました。岸田森より先に日本にも吸血鬼俳優がいたのは発見でした。

この映画、タイトルにある女吸血鬼は最後まで出てきません。

なぜこのタイトルにした?

 

『地獄』・・・同じく中川信夫が監督した映画で地獄というのは比喩ではなくズバリ地獄そのものを描いています。現生で罪を犯した男女が地獄に落ちるという話でエンマ大王やら鬼やら地獄の責め苦が延々と描写されており公開当時はこれがシネマスコープの大画面だったというから驚く。

『青春の蹉跌』の神代辰巳が1979年に原田美枝子、林隆三主演でリメイクしています。山崎ハコの主題歌が強烈でした。

 

『女死刑囚の脱獄』・・・これまた中川信夫作品です。80分ほどの映画で展開的にはあっけない印象はあるものの途中の脱獄シーンや列車内での逃亡シーンなどはスリルがあってさすが!と思わせました。

新東宝の制作で主演は高倉みゆき。この女優さん新東宝の社長だった大蔵貢の愛人だったことがばれて大スキャンダルになった人です。

大蔵貢は記者会見で『女優を妾にしたんじゃない。妾を女優にしたんだ』と言い放ち話題になりました。

 

人間だったり人間じゃないものが何だかぐちゃぐちゃ。

 MoMAとはニューヨーク近代美術館のことだがそのコレクションに80年代のカルトホラーの怪作『バスケットケース』が加えられたそうだ。

ぼくはこの映画を観ているのだがなぜ権威ある美術館がそんなことをしたのか理解に苦しむ。

どこが現代美術なのか?

物語の発端はシャム双生児の兄弟を無理やり分離することからはじまる。弟の身体から切り離された兄は胸から下が何もない状態でゴミ箱に捨てられてしまう。

双生児のテレパシーでつながっている弟は兄を救い出しバスケットケースに隠し生活するようになる。

その兄の造形がなんともグロテスクなのだ。しかも気持ちの弱い弟と違い意思が強く怪力な上に凶暴だ。この兄が弟を支配するようになり復讐と殺戮をくり返していく。

弟に恋人ができればその娘も殺してしまい、あろうことか死体を犯す。性器もないのに。正視することができないおぞましい映像だ。

救いなのは1982年の制作で資金も潤沢にはなかったのだろう、造形はたしかによく出来ているのだが動きがハリーハウゼンのごとくぎこちなくコミカルなのだ。

笑えないけどね。

しかしカルト的な人気がありシリーズは三本つくられた。最終的には同じ畸形の姿をした女も登場し二人の間にベビーまで出来てしまう。

狂った映画だが82年当時のビッグアップルと呼ばれたニューヨークの生々しい姿が映し出されている。今は亡きワールドトレードセンターや猥雑でごったな42番街が映画の舞台となっています。

まさしく『タクシー・ドライバー』の世界だ。

そんなところもMoMAに評価されたんでしょうか。

シリーズ3本ともU-NEXTで観ることができます。そのほかにも『バタリアン』とか『死霊のしたたり』などのシリーズもすべてラインナップされていて時間がいくらあっても足りないなあ。

未見のものでもタイトルだけで期待させる作品がたくさんあるしね。

U-NEXTの配信本数は半端ないですなあ。